お墓を新しく造ったり、修復したりするというときには僧侶を招いて荘重に供養を行います。この儀式を経てはじめて、単に形のある墓石だったものも霊験ある「尊石」に生まれ変わることになるのです。そこで、こうした供養のことを「開眼式」または「開眼供養」といいます。

開眼について、浄土宗の祖である法然上人の法話・消息などを収録した「和語燈録」巻五で、つぎのように述べられています。

 

開眼と申すは、本体は仏師が眼を入れて開きまいらせ候を申し候なり。是をば事の開眼と申すなり。次に僧の仏眼の真言を以って眼を開き、大日の真言を以て仏の一切の功徳を成就し候をば理の開眼と申也。

引用:和語燈録

新しく墓石を購入したときには、開眼法要を営むことになります。墓石を購入したということは、この場所にご本尊を迎え、祖先を祀ることになるわけで、重要な法要の一つということになります。

ただ、ここで注意したいことは、開眼供養の対象は「ご本尊」「遺骨」であって、墓石そのものではないということです。墓石に対しては、ご本尊を安置するところであり、これを清浄な場所としなければならないという意味で、精神的面から「お清め」の儀式を行うことになるのです。

宗派による呼び方

この開眼法要は浄土真宗本願寺派では「入魂式」、「開眼供養」というように呼びます。地方によっては「お霊入れ(おたまいれ)」、「お魂入れ」、「性根入れ」ともいいます。
法要の営み方は、宗派によってそれぞれ異なりますので、菩提寺に相談されるのがよいでしょう。

新しい墓石を買いなおしたとき、古い墓石はどうするか

お墓の引っ越しによって、移転先で新しい墓石を立て直す場合、それまでの古い墓石はどうすればよいでしょうか。ただ、遺骨を移し替えるだけでなく、古い墓石の「お霊抜き」、「性根抜き」という儀式を行うべきなのでしょうか?

普通には、開眼式(お霊入れ)のとき、古い墓石から遺骨を取り出して読経をいただき、礼拝の上、遺骨を新しい墓石へ移し替えます。遺骨を移し替えることになるので、遷座法要を行うことになります。最近では、開眼供養に対して、閉眼供養(へいがんくよう)と呼ばれていますが、一般的には「お霊抜き」「性根抜き」、正式には「撥遣(はっけん)」といって、いままでのお迎えしていた仏・菩薩を、仏・菩薩の仏国土におかえりいただく儀式なのです。墓石そのものについては、容れものなのですから、「お霊抜き」の必要はないわけです。

開眼式を行う必要はあるのか

日本人の大部分は”仏教徒”ということになっています。
仏教の立場から言えば、開眼式は行わなければならないものです。
仏罰が下るというものではありませんが、開眼供養を行っていないとしますと単なる石を「ご本尊・暮石」として拝んでいることになるのです。墓石そのものは容れものですからご本尊を新しくお迎えしたとき、暮石を造りなおした時は開眼供養を行わなくてはなりません。

お墓を引っ越しするとき、古いお墓を取り壊すときに人間の手に触れることになりますので、撥遣(お霊抜き、性根抜き)をして、仏国土におかえりいただいてから、極端に言えば、単なる石にしたうえでということになります。そして、新しい移転先でお墓を新たに造ったときに、新たに仏国土から、仏・菩薩をお迎えする開眼供養をおこなうという二重の手順をふむことになります。